2014-01-01から1年間の記事一覧

晩秋印象派

一日は黄葉紅葉散りゆくを別れた人の泰然とあり ガス灯をともして回る夢をみるよもつひらさかいついつ出会う 慰めでなければいいの心から悼んでいるか分からなくなって 痛みには名前がほしい角砂糖溶けゆくまでの曖昧に耐え 寒雷がずっと鳴っている鳩尾のあ…

ゴジラノワール

「どこゆくの」母の声するお三時のつたい歩きの人類のころ 思い出はゴジラノワール日の出ずる国のふたたび灰燼に帰す 炎天に立ちつくしおり一切は光りとなりて色をうしなう ゴジラとう愛もあるべしたれもみないけないことに胸おどらせて ひたすらの正義を恐…

一人受く

天高くボールを投げて一人受くいつか逝く日を知るかのように そこかしこ蝉のなきたる森を出でひとつ命は惜しまれいたり 後悔をにれかみており青空も雨へとかわる雲を引きおり 爪を噛み見るものなべて不安なるルドンの花を壁に認むる 風はゆき明日にそよぐ葉…

終活

はなびらの肩をよせあうさらさらと謀など話しおりたり かたばみの恋に気づけどもうすでに閉じて閉じられ言葉はなくて 思い出はクローンのようにわれに似たご都合ばかりを懐妊したり 「永遠」と名付けてあげるウナセラディ消えゆくものだけ求めていずに 佇め…

ウサギのような加湿器

放埓を生きしのち君さざんかの散って無惨と言うことはなし 平穏な暮らしであればきみを抱く朝もなかりき水準器を置く アルコール依存、脊髄増殖性腫瘍と不治の病を二ついただく 玉子かけごはん食べおえ血液400cc捨てにおもむく 火、金とハイドレアカプセ…

星は流れる

晩秋の風のすぎゆくほろほろと落ち穂拾いの言葉を生きよ 北向けばあばらを過ぐる霜月の風をはらみてほつれし釦 冬を告ぐ花であるらし水仙の歌が聴こえるひとりがふたり 押印のごと街を染めたる夕焼けのその日はたれも禁を犯さず つむじかぜ一周おくれはたれ…

月鞠十四号 「虹の根本」

雲おもき水底の空ああわれは息継ぎ下手の生きものなるよ そぼ濡れてをるわが肌に虹色の山椒魚は這ひあがりきぬ 雨ばかり風吹くばかりの休日は「紅の豚」を繰り返し見つ 雨上がりきみは知らずやおのおのが虹の根本となりたることを 風つよく切り捨てられない…

絵画のやうに + 1

あかあかと接吻交はしクリムトの崩れゆきたるのうぜんかづら 接吻:くちづけ 大いなる地下水脈を抱くごとく弄ばれし果てのピアニシモ きみといふ稜線たどり終はりなむ爪先までの西陽をうけて ワイシャツは縞の模様に染まりけりブラインドとふその場しのぎの …

朝のメール 七月、アルコール依存症の仲間から余命十カ月とのメールが届く

暖簾とふ結界ありしが酔ふほどに頭をたれる無頼でありき 無頼とふ呼び名もらひし吹きだまり猫のいつぴきシャツに包みつ

二十六首

炎天に堂々と降る蝉しぐれ赦しを待てる嘆きにあらず 影のごとゴマダラカミキリ飛び去りて地上すれすれの空の残れり 木洩れ日はやさしかりけり来し方を問はずにあそぶ手のひらの上を 真夏日のごみステーション雷雲を映して立てる姿見ひとつ 恋初めし文月うた…