2016-01-01から1年間の記事一覧

片恋の生、あるいは花

水仙の黄のゆらめきの気ぜわしく、かなにひらきてそらをみたしぬ マグノリア北をめざして身をよじり祈りの数の名前を持てり 木瓜の花、昼のさなかを耐えぬいて赤く咲くこと選びおりたり 昼下がりクラリネットが満ちゆきてひたすら懈しかげろうの立つ 鎌首を…

褐変(デュアル4)

真冬日に冷えるイヤホン言い訳をすることもなくホームにて待つ 両の手をかくしていたりその朝は人を縊れる夢で起きにき やり過ごす力もあらず路地裏の電線二本ゆれているのみ 電線になりたかったんです夕暮れに迷える人の家路のように 沼よぎる蛇のさざなみ…

月光の会 第三回黒田和美賞受賞

自選三十首 冬の踊り場 水菓子のたとえばそれは傷ついた鳥をつつみし手の椀に似て * こぼれくる言葉をひろう春の日の影あわくしてきみは他人に もうきみの仕草もわすれ花の名も思いだせずに卯月のかかり ああここに地層が見えるきみ抱きしわが手のひらに降…