2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧
胸の窓ひらけど空へ飛び立たぬひそみ棲みたる鳥の名前は
決意なく冬のこの川わたるとき風追う声のみ信じてをりぬ
立ち止まり春の傾りに風の尾をつかみて坂は菜の花の坂
雲の名を覚える頃は過ぎ去りてただ口笛を空へ吹きをり 雲の名を覚える頃は過ぎ去りて煙草のけむり青の胸処へ 推敲
コンビニの防犯ビデオに写されていつもの私はいつかの私
ゆるぎなく開くときあり虹彩の意志を一輪わたされてをり
妖艶を吾に知らしめおかっぱの山口小夜子ひと世舞ひ終へ 月蝕になに裁ち切りしおかっぱの少女見る夢髪降り止りぬ
眠られぬ耳もと遠く血の流る身体の暗渠海へと出でず
わが胸の弥生水仙高らかにラッパを鳴らせ越冬終えて 悲しくば悲しみきつて風よ吹け川をわたれば弥生三月 悲しくば悲しみきって咲く花を胸にともして弥生三月
砲台はふんにまみれて岬の辺鳩には鳩の夢みる平和 あいまいに鳩の数だけうなづけば雨のち晴れの公園の香は
後悔はできぬのだよゆくるりと白き砂糖の溶けゆく紅茶 くたびれた白きシャツ干しいち日を風にまかせて眺めてゐたり
素面なら分け入りもせぬ山道に冬の星座は幻聴となり 幻聴が鳴り止む空に願わくばわれに奏でよ冬の星座を 枝枝は冬の鳥籠囚われてわれ啼く夜に星は降りたる 卓上にバナナは熟れて黒点の死にゆくまでの愉悦あるらし 新鮮と腐敗のはざまそしてなお果実持つ手の…
鼠捕り音なく沈み真昼間に胴震いするバケツがひとつ