「短歌」詠草3月号


素面なら分け入りもせぬ山道に冬の星座は幻聴となり


幻聴が鳴り止む空に願わくばわれに奏でよ冬の星座を


枝枝は冬の鳥籠囚われてわれ啼く夜に星は降りたる


卓上にバナナは熟れて黒点の死にゆくまでの愉悦あるらし


新鮮と腐敗のはざまそしてなお果実持つ手の震えは止まず


古びたる心臓のごと干柿がぽつんと点もる軒先の夕