2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧
口癖は「やるときはやる」アル中は指名されないピンチヒッター 我は二死九回裏満塁で三球三振の夢捨てがたく
恋ふ人は「同じ空の下」とメール打ち屍もあまねき空の下
ふとふいにすすきの原を見たくなり す・す・き と分かてば珈琲冷めゆく くちびるを す・す・き と分かてば遠くから運ばれしもの耳に風ふく 風使い枯尾花の海に舟を出す洟(はなみず)たらす冒険王あり
地下鉄のふた駅分を歩きおり秋は地上に天蓋を成し
ぎいぎいと我がアルカディア爪を研ぐ獣がいて心安まらず
古書店に 君 笑顔載る文庫あり数百円なれど盗みたし その笑顔三十年そのままにして文庫閉じればへたな歌声
野分け過ぎ天上の湖(うみ)碧深き水依存の君空に飛び込め
きょう暮れておなじ日輪昇らぬをまばたき一つ愛し忘れて
日が暮れて決意はいつもあと追いの影踏み鬼の溜め息に似て
顔をあげ「捨ててしまおう」つぶやけば風渡り樹々は許されている
なり果ててなり果てでしかない日々を酔うて蕎麦屋の前に立ちをり 真夜中の無人のビルの屋上で西瓜を食べし夏は過ぎたり 顔歪め腹刺されてもマジっすかマジ死ぬんすかと尋ねる君 ぼくはここわたしはここよここにいるプラネットアースうちゆうにひとり 和金の…
強迫の予定縦横書き込んで眠る女の手帳雪崩る
アルコオル抜けゆく午後は部屋閉じてシュレーディンガーの猫となり果て
今日ひと日雨ほそ長く季節(とき)は満つ つくつくほうし明日鳴き止まん
こおろぎの弱肉強食仕方なくその音は遠く銀河触れあう
茫々と酒飲み終えて虫の音を聞いておつたよ街灯の下
いっせいにつくつくほうし鳴き止んでインテルメッツォ狂おしくあり
孤独死の司法解剖免れて酢となり果てし父の酒捨つ
だくだくと流れる川に雨が降る茶椀一杯水意志を持つ 秋雨に茶椀一杯満つ水も意志持ちてなお氾濫するを
なぜに風なぜに虫の音なぜに月なぜにわたしは秋のさなかで ただの風ただの虫の音ただの月ただのわたしは帽子を脱いで
地から湧き谷に舞い降る秋の音が奇跡であればわたしすら、また
わが秋は谷間に深く沈む駅鉄路に続く篆刻の月
秋に陽は路地裏を舐め塔を切りCTスキャンの鼻梁のあたり
爪を切り瘡蓋を剥ぎ髪を抜く さっきまで私だったものたち