2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

無題

あかあかと接吻交はしクリムトの崩れゆきたるのうぜんかづら 接吻:くちづけ 遠雷に見送りし人おもひをり水無月も尽き明日は手紙を

梔子

朽ちるためこの身あらねど梔子は無惨なまでの白を咲きをり たつぷりと覚悟をふくみ落ちゐたる梔子の裔われは知らざり 裔:こはな

九日義父八十四歳で逝く

梅雨入りに義父は逝きたりいづくかに忘れ去られし軍刀ひと振り 紫陽花は見送りもせぬ野辺となり濡れてただ美し葬列のゆく 蕭蕭とかの地も雨のなかにあり果たせずにゐることなど思ふ 酌み交はしうなづきあつたことごとく反古にしたまま梅雨のつばくら あぜ道…

ゆづり葉

残すもの何ひとつなくゆづり葉のただ生い繁る無風水無月 ゆづり葉の繰り返される返礼の疾うに亡くせしものありたるに

写真家杉本博司氏の「海景」を見る

海と空わかつものなく果てといふ水平ひとつ胸にだきをり ふれるほどむきあふ海へもう半歩胸の水位に波のたちゆく 安寧の言葉なくせど手を広げ海の水平たもちてをりぬ