2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

JANIS JOPLIN

去つて行く悲しみすらも哀しくて「失ふものがなければ自由よ」と 去る日とて何もなければそれでよし決意などなく 朝 髭を剃る 痛みなく頬にひとすじ血の流るのつぺらぼうの始まりにさへ 弔いのサザン・コンフォート口惜しく飲む夜終へて追憶に酔ふ 握られし…

日記

ベランダに小春日和の布白きレコード聴きて歌を詠みをり 驟雨あり 一瞬にして我がこころ暗転したり机に向かう 料理酒を計量カップに注ぎをりカタカタ鳴る日は過ぎたりしか アル中に過去という名の朝は来ずつつがなきやと自問してをり

VENUS AND MARS

なに神と呼ばれしか我が惑星はVENUS AND MARS 瞬いて 美の神と戦(いくさ)の神に挟まれて凪ぐ海もあり冥(くら)き宙(そら)には 出でずとも戦(いくさ)の言葉疎ましく宵の明星(あかぼし)凪ぎを見に行く 苺酒ポールの声はより甘くヴァッカスの日々は今も傍ら

Untitled

無意識に歩いていると海に出たこれはマズイ帰(還)る術がない

雑感そのままに

夕暮れが散歩の向こう立ちふさぐわが心臓は左を向きたり 誰がための横断歩道電子音いきはよいよいかえりはこわい

野草

名も知らぬ奇妙な蔓の花の名を図鑑で調べ後ろめたき夕

午後のニュース

蛆のごとニュース湧き出で柿、林檎、卓の籠にてみるみる腐りぬ

モズ

奇異奇異と即身仏は祀られし蜥蜴の頭百舌鳥の速贄

カラス

鰯雲空が高くて鴉たち上ばかり見て請ふ請ふと啼く

ペット

両耳に赤いリボンの美しいコッカスパニエル小さきペニス

スーパーにて

十字切り何のまじないぞ別寅のハンペン竹輪買う老婆あり

地下駅にこおろぎ鳴きて電飾はスイスグリンデルワルト渓谷

豆腐

米突く雀のごとくおどおどと湯豆腐崩して暗き沼あり ある秋は震顫はげしくままならず豆腐一丁鏡に投げて

丹桂(金木犀の漢名)

丹桂の喘息病みし香は強く剪定鋏張り裂むまで

金木犀

野分け 惨 坂一面の金木犀ルビコン川をだらだら下る 我に来よ盲目の秋かくまでに金木犀は濃霧のごとし

遠い日

図書室の紙魚あるカードに君の名を見いだし我もアデン・アラビアへ

柿の実が落ち地に残す朱の渋さなるほど日本にニュートン出でず

虚無

青く咲く薔薇を捧げる虚無もなくえへらと笑えば唐突に暮れ ・『虚無』と入力すれば自動記述のようにできてしまったもので、あまりよくない、と自分でも思う。 しかし、なんせ寡作ですから、数の内に入れておこう.......

不整脈

不吉なり差されたままの朝刊君出社せず我が帰宅す 林檎むきタオルを冷やし手を当てる不整脈には不要 切なき 朝方の君の鼓動の変拍子スティーヴ・ガット二拍三連

秋桜

車窓から秋桜の畑(はた)ゆれていて見知らぬ駅で見知らぬ我を 秋桜の迷路迷えば光来る西の方へと導かれ往き

秋の実り

手のひらを西陽にかざせばやわらかく果実を包む毛細血管

独白

仕方なく仕方なさごと受け入れるそのとき時は穏やかに暮れ 虫の音をじっと聞いておりしかど我が音は切なく表に出でず