2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

十五首

耳もとへ風のささやく初春のここよりくだる玄き階梯 玄き:くろき しまらくは籠れる日々に鳥 一羽まよひ来ぬ さてどうしたものか オブラートにがき薬をつつみつつ冬の陽に透くわれの指さき 尉鶲群れなすをやめさへづればわれの知らざるチベットの風 尉鶲:じ…

夜が明けたら  浅川マキ追悼歌十五首

幕間だらう道化師ひとり現れて訃報をつげる第二幕とは 紅き薔薇咲かせてねむる港町五丁目二番地宛名は知らず 過去からの陽ばかりなじむ朝日楼きしむ階段おにさんこちら 夕暮れの天動説は悲しかり丘より望む同じふるさと 少年は悲しからずや口笛を風に運ばれ…

即詠歌六首

面の皮一枚のみの体温が世界と分かつ冬のわが位置 川に沿ふ道をゆきたるイヌやネコ不安といふはそのやうなもの 一日を始めるために髪あらふその潔癖をわれは疎みぬ きみに寄すためらひつつの言の葉を繁れる森は受け入れずあり 街が凪ぐ夕日を浴びて整然とな…