2007-01-01から1年間の記事一覧
ふつふつと日が暮れるまで眠るまでタートルブルース聞いておりたり 昨日から頭の中の路地裏で縄跳びをする少女眺めて 踏切を渡る夕暮れ吾の中の鳥撃ち落とし巣を家とせむ 震えるもの天から下ろすを弦と言ふ祈りあまねく音楽となる 鳥が飛ぶあの高さから自ら…
流れる人波をぼくは見てる夕暮れにうそぶくようにくちぶえ吹いて
ラジオの波長少しずらせば秋の夜に遠くのヘルプレス届きをり 消えてゆく団地の明かり終電のクロスワードの答えはあらず
奥深く釘の頭の打ち込まれ木の悲椅子の悲われは動けず
王様は裸だと言ひえず諦念の白木の箱の石の軽さは 抜け殻も残せぬ人のひと夏に遺骨がころんと鳴ひて正午
燃やすため一輪にぎるこの右手母はそのため吾を生まざるを 形而下に朽ちゆく身体を畏れつつわれ母を二度葬らむとす 形而上葬らむと添い寝するドライアイスの母は冷たき 路地裏をキリコのやうに帰りくる少女見おろし母も小さき 「きれいや」と漏れし遺言神々…
炎天に溶けるもの溶け溶かされぬ思いのみ持てかげろうの立つ 関節に思いを溜めて指指は節くれだつた言葉を並べ 君といふ万有引力狂ふとき蛇一匹我が水面を裂きぬ 寝返りを続けつづけて昼寝などあきらめヴギィを聴いてをりたり 生ごみは明日のあした青くさき…
夏といふ暮れぬ一日そらぞらと持ち越すものも捨て去るものも 手のひらで豆腐を切ればふるふると金魚のやふにボウルに逃げをり
あいうえお、にくいし、くつう鼻濁音消へて母音の美しい国
まだらなる麦わら帽は木洩れ日を噛み殺しをり夏の鼻先
君われを罪とは言はず悲しみと真綿やふに告発す 朝
みずからの香りに自死し口梔子は風にまみれて夜に腐りぬ
受け切れず君のささやき落下する刹那言葉の空中ぶらんこ
薄暗きパソコンともし蛍雪の死語ゆたかなり文月朔日
ユモレスク頬づえもの憂く熱を帯びあめあめふれふれ口ずさむ午後 慢心に貧すれば鈍し頬ずりのペコちゃん人形抱いて寝てをり
梅雨空へ爆ぜる音してぽつぷこうん甘きかほりの満ちゆく厨 甲虫のたたみ損ねし翅は濡れそれでもなを低き梅雨空よ
ざわざわと同じ夢見るこの胸はなに飼ふ鳥籠開襟シャツ着る
短調といふ音楽理論知らねどもただただセロの切なき梅雨入り
つかのまの慰安と不安交差する酒場を我の兵站として 黎明に前後不覚の悔しみを酒場に預けて始発を待てり アナキスト酒場で酔へば雪の降る医者は戒厳令をしきたり 乱痴気の酒場墓場の亡者たち逃亡するにも明日はどっちだ
懸けるものなくして命何ならむ生きながらへて陰暦に棲む
悔しみの酒場ばらばら咲く花の散らして紅き月夜を帰る
水無月の蠅は黒点何を待つ梅雨のにほひよ白き紫陽花
雷の轟きよりもうち震へ何を求めむ野良の犬たち雷 = いかずち
酩酊の階段降りれば娑婆に降る夜来の雨は口梔子堕とし
西陽入るセロのやふな部屋にをりピアノの石を採集してゐる まぶた揺れ目眩のやふな独り言「地から空へ弦を張りたい」
がらくたの遺棄した無念あらはにし遠くに聞こゆ太陽がいつぱい 遠雷は連れくる闇の天幕を一瞬裂きて我をさらしぬ
ひさかたの雨の終はりを告ぐあかねふいに含羞肩に積もりぬ
頑是無い我れの上にも朝は降り寄る辺ない夜さよならをする
洗濯を干す夕暮れに陽はあかし不如意の空に法はありたり
初夏に向け君のTシャツ洗へども一人称で泡は消へゆく