2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧
石の音を凪ぐ海沿ひに置いてゆく水平線は弦のごと張り
夜泳ぐ魚となりて湖面までケルンの月に昇つていきたし 風渡るケルンの月は揺らぎをり青の湖面のその底の青 陽はひかり月はあかりと知りたるか夜の魚は慈愛を浴びぬ 天上の湖面の月は繭にして夜の魚は悲喜を紡ぎぬ 浮き袋青く灯して夜の魚静の海に産卵を終え …
追悼のト書き捨て去り立ち尽くす献花となりて舞台暗転
恋歌を恋するすべなく口ずさむ金魚売りの昼はなやかなり
岸辺にはペツトボトルの揺らめいて水が恋ひしと啼く魚に似たり
待ち合ひに命を拾ふぼろぼろの診察券の貼られてゐたり
恋歌は海を渡りて一枚の画布のごと我を包みて画布 : カンバス 半島に立ちて切なく満ちるもの掌すくふ言葉はありや 裏切りも歌となるまで抱ひてをり声をたつきに海鳥はあり
ゆくゆくは墓碑銘ならむ我の名をパンに刻みし月降る夜は 定席の隣にいつも鳩がゐて公園の椅子空と向き合ふ ころころと転がつてゆくをかし気な思ひがあつて坂と知りたり
解き放つ悲しみもあれステージの裸足のパティ原人のごと グロリア!と囁き叫ぶ昼下がりパティは汚れて聖獣じみて 目を隠しダーマト赤く一瞬に日暮れて詩は読み上げられむ詩 = うた 永遠の二重写しの肖像のパティ忽然と歌になりたり
脳髄に50億年の記憶あり羊歯のごと一日ひつそりする
諭すとき面持ち歪み尻痒し鏡に映る苔むす白舌
われわれと言ひへず我は風を待つ一斉の桜ひとひらのみ散る
ポリバケツ洗はば水色冴ゆるまでりんご売り赤狂ふまでに白衣
夜桜の下を流れる暗渠にもひとひら逝きてオオハンザキ動く ホームレス吹きたるハモニカ転調し「私によく似合う靴」探しをり