2006-01-01から1年間の記事一覧

裏山の竹林を歩く

いろはにほへとこふことは寂寂寂と竹林抜ける寒の夕べに

ゆく年くる年

来し方に黎明ありて行く末に問うことの意味さらに問われて

題詠[禁止]

歓談を人指し指で禁止され兵馬俑らの朝礼始まる

待つ身......

見つめると一瞬怯みて秒針は待つ身もメロス時を早めり

ジムノペディ

月明かり仄かな部屋のジムノペディ凡庸憂い素となりて満つ

聖夜

彩られ明かされ尽くし摩天楼すでに闇なしこふこともなし

硬貨

三十年握りし硬貨ポケットで腐臭を放ち通用せずに

雨の午睡

雨の日の午睡醒めれば夕映えの......部屋にチェロの音重く満ちゆき

オリオン

立ち止まりオリオン仰げば三つ星の冬の切っ先喉元にあり

題詠「ポケット」

手品師も鳩解き放ちポケットに聖戦の薔薇火薬のにほひ

独り言

独り言聞きたき夕べは裏山の古墳に行きて石を集めり

思ひ出 2

鉄棒に吾子は耳あて言葉より速き思いの信号を待つ

北原ミレイ

FMから震える鉛の船が出る北原ミレイ石狩挽歌

胸に澱薬剤のごとつもりゆき暗きへ傾ぐ分銅天秤

子供の自殺

イヤホンからニュース流れて死にゆく児スピーカーに換え冷蔵庫に入れ

スイッチ

心には千のスイッチ眠りをり不安暗澹ブレーカー落とす

正義に酔う人

君の説く正義は酒のごとくあり馥郁たる嘘に酔いたりし

寝つかれず

風のない夜には耳を救いなき朝には眼宙に浮かべて眼=まなこ 宙=そら

思ひ出

保育所の帰り吾子が月を指し夜の階段と言ひ 登りぬ

伴侶

七寸に君の肌着をたたみをり十文七分の観念持ちて

月光

月光が部屋の隅々積もりをり白、玄、青、朱と埴輪を作りぬ

心と身体

お気楽に等身大で生きると言ふその肉叢の手強き闇

文化の日

無味無臭消し去ることが緩解か文化の日には野を焼く匂い

野良犬を見ることもなき公園で餓死したる児の記事を読んでいる 小糠雨レインコート着たる犬衣食足りて子らは死にをり

やや回復

鶏頭のコスモスよりも首ひとつ高く燃えをり秋も誇らし

最中

かさかさと鉛筆の音乾きをりまま文字となり言葉悲しも

JANIS JOPLIN

去つて行く悲しみすらも哀しくて「失ふものがなければ自由よ」と 去る日とて何もなければそれでよし決意などなく 朝 髭を剃る 痛みなく頬にひとすじ血の流るのつぺらぼうの始まりにさへ 弔いのサザン・コンフォート口惜しく飲む夜終へて追憶に酔ふ 握られし…

日記

ベランダに小春日和の布白きレコード聴きて歌を詠みをり 驟雨あり 一瞬にして我がこころ暗転したり机に向かう 料理酒を計量カップに注ぎをりカタカタ鳴る日は過ぎたりしか アル中に過去という名の朝は来ずつつがなきやと自問してをり

VENUS AND MARS

なに神と呼ばれしか我が惑星はVENUS AND MARS 瞬いて 美の神と戦(いくさ)の神に挟まれて凪ぐ海もあり冥(くら)き宙(そら)には 出でずとも戦(いくさ)の言葉疎ましく宵の明星(あかぼし)凪ぎを見に行く 苺酒ポールの声はより甘くヴァッカスの日々は今も傍ら

Untitled

無意識に歩いていると海に出たこれはマズイ帰(還)る術がない