2006-01-01から1年間の記事一覧
夕暮れが散歩の向こう立ちふさぐわが心臓は左を向きたり 誰がための横断歩道電子音いきはよいよいかえりはこわい
名も知らぬ奇妙な蔓の花の名を図鑑で調べ後ろめたき夕
蛆のごとニュース湧き出で柿、林檎、卓の籠にてみるみる腐りぬ
奇異奇異と即身仏は祀られし蜥蜴の頭百舌鳥の速贄
鰯雲空が高くて鴉たち上ばかり見て請ふ請ふと啼く
両耳に赤いリボンの美しいコッカスパニエル小さきペニス
十字切り何のまじないぞ別寅のハンペン竹輪買う老婆あり
地下駅にこおろぎ鳴きて電飾はスイスグリンデルワルト渓谷
米突く雀のごとくおどおどと湯豆腐崩して暗き沼あり ある秋は震顫はげしくままならず豆腐一丁鏡に投げて
丹桂の喘息病みし香は強く剪定鋏張り裂むまで
野分け 惨 坂一面の金木犀ルビコン川をだらだら下る 我に来よ盲目の秋かくまでに金木犀は濃霧のごとし
図書室の紙魚あるカードに君の名を見いだし我もアデン・アラビアへ
柿の実が落ち地に残す朱の渋さなるほど日本にニュートン出でず
青く咲く薔薇を捧げる虚無もなくえへらと笑えば唐突に暮れ ・『虚無』と入力すれば自動記述のようにできてしまったもので、あまりよくない、と自分でも思う。 しかし、なんせ寡作ですから、数の内に入れておこう.......
不吉なり差されたままの朝刊君出社せず我が帰宅す 林檎むきタオルを冷やし手を当てる不整脈には不要 切なき 朝方の君の鼓動の変拍子スティーヴ・ガット二拍三連
車窓から秋桜の畑(はた)ゆれていて見知らぬ駅で見知らぬ我を 秋桜の迷路迷えば光来る西の方へと導かれ往き
手のひらを西陽にかざせばやわらかく果実を包む毛細血管
仕方なく仕方なさごと受け入れるそのとき時は穏やかに暮れ 虫の音をじっと聞いておりしかど我が音は切なく表に出でず
口癖は「やるときはやる」アル中は指名されないピンチヒッター 我は二死九回裏満塁で三球三振の夢捨てがたく
恋ふ人は「同じ空の下」とメール打ち屍もあまねき空の下
ふとふいにすすきの原を見たくなり す・す・き と分かてば珈琲冷めゆく くちびるを す・す・き と分かてば遠くから運ばれしもの耳に風ふく 風使い枯尾花の海に舟を出す洟(はなみず)たらす冒険王あり
地下鉄のふた駅分を歩きおり秋は地上に天蓋を成し
ぎいぎいと我がアルカディア爪を研ぐ獣がいて心安まらず
古書店に 君 笑顔載る文庫あり数百円なれど盗みたし その笑顔三十年そのままにして文庫閉じればへたな歌声
野分け過ぎ天上の湖(うみ)碧深き水依存の君空に飛び込め
きょう暮れておなじ日輪昇らぬをまばたき一つ愛し忘れて
日が暮れて決意はいつもあと追いの影踏み鬼の溜め息に似て
顔をあげ「捨ててしまおう」つぶやけば風渡り樹々は許されている
なり果ててなり果てでしかない日々を酔うて蕎麦屋の前に立ちをり 真夜中の無人のビルの屋上で西瓜を食べし夏は過ぎたり 顔歪め腹刺されてもマジっすかマジ死ぬんすかと尋ねる君 ぼくはここわたしはここよここにいるプラネットアースうちゆうにひとり 和金の…
強迫の予定縦横書き込んで眠る女の手帳雪崩る