母歌


燃やすため一輪にぎるこの右手母はそのため吾を生まざるを


形而下に朽ちゆく身体を畏れつつわれ母を二度葬らむとす


形而上葬らむと添い寝するドライアイスの母は冷たき


路地裏をキリコのやうに帰りくる少女見おろし母も小さき


「きれいや」と漏れし遺言神々し母の眼を持て逝く陽を送る


崩れゆく母の頬にもあかねさし紅玉の紅かくにも腐し


夕照を孕みし母のホスピスで金の林檎を我は剥きをり