褐変(デュアル4)


真冬日に冷えるイヤホン言い訳をすることもなくホームにて待つ



両の手をかくしていたりその朝は人を縊れる夢で起きにき



やり過ごす力もあらず路地裏の電線二本ゆれているのみ



電線になりたかったんです夕暮れに迷える人の家路のように



沼よぎる蛇のさざなみ網膜に焼きついており恋知らぬころ



恋そめしきみの名前をつけし花ムラサキツユクサむらさきのきみ



浪漫なら小さきろまん手のひらで潰すがごとく包めるように



あるがまま受け入るる朝もおとずれずスプーンの腹で潰せる苺



酩酊の手をつなぐ人ついになく知り得ぬままのうしろの正面



わらべ唄ほころびのごと漏れいずるつぐみつぐめど懐かしき声



棒立ちのわれであるから風吹くな今日の吐息を揺らしてゆくな



さてもさて木偶の坊なら弁明の機会を待たず北を向けとよ



傷めたる冬の指先これからは触れることなき君のまぶたも



褐変 はにかむような夕暮れは言葉ひとつを傷めてゆけり