星は流れる
晩秋の風のすぎゆくほろほろと落ち穂拾いの言葉を生きよ
北向けばあばらを過ぐる霜月の風をはらみてほつれし釦
冬を告ぐ花であるらし水仙の歌が聴こえるひとりがふたり
押印のごと街を染めたる夕焼けのその日はたれも禁を犯さず
つむじかぜ一周おくれはたれならん枯れ葉まいおる冬のかたすみ
風まえば疼くものあり庇うようバックパックを前にまわせり
粉雪が十一階まで舞い上がりパソコンの手をしばし休めつ
ホリーナイト暗き車窓に映りたるわれを見つめるわれに降る雪
「もうすでに済んだことです」ラジオから聴こえてきたる闇のありたり
生前の言葉を流すラジオからくぐもるようなわれに似た声
「なあおまえ崩れていけよいつまでも天秤棒なぞ担いでおらず」
通過する駅の夕暮れ伸びてゆく人影たちも置き去りにして
その駅にさよならのあり果つるまで見送るための切符いちまい
膝だきし胎児のような落日が鉄路のむこうにしばらくありぬ
亡き友の最後の言葉知らずとも空を滲ませ星は流れる