ゴジラノワール


「どこゆくの」母の声するお三時のつたい歩きの人類のころ



思い出はゴジラノワール日の出ずる国のふたたび灰燼に帰す



炎天に立ちつくしおり一切は光りとなりて色をうしなう



ゴジラとう愛もあるべしたれもみないけないことに胸おどらせて



ひたすらの正義を恐る夏の空われに向かいてゴジラは立てり




回復プログラム


落蝉のオカリナとなり晩夏へと供えるものを一つと持たず



純というまどろっこさゆえ立ち止まり舌打ちののち重なるクチビル



鬼灯の枯れてゆきたるベランダに讃美歌よりも高き空あり



「ついに」とは深き欲望そしてまた裸木のままに立てる諦念



皿を割ってしまえば戻らぬ(というような)世界は迂闊に支配をされて



間にあわぬあなたの町へ行くバスのとびらの音の空へ響けり



耳順とは暮れ方ならむ誰からも心いただく花いちもんめ



手をつなぎ遊びし路地の今はなくあの子が欲しいと言えざりにけり



嬉々として雨に濡れたの覚えてる? a / m / e … あれはまだ言葉を知らぬ日



取り立てて正しくなくとも平穏を生きていけよと朝に花咲く