一人受く

天高くボールを投げて一人受くいつか逝く日を知るかのように



そこかしこ蝉のなきたる森を出でひとつ命は惜しまれいたり



後悔をにれかみており青空も雨へとかわる雲を引きおり



爪を噛み見るものなべて不安なるルドンの花を壁に認むる



風はゆき明日にそよぐ葉ざくらも見送りしのちの青の葉ざくら



交わすべき言葉を捨てた舌打ちが合図のように日照雨降りくる



きれいごと言っては黙るくりかえしカンナの赤を知りし後にも



きみの居ぬ部屋で見つけしコルトレーンいつ聴きしかをわれは知らざり



いやそれはどうでもいいのさ生きている生きていないの外のことなど



この胸をせり上がりこし思い出は混ぜてはならぬ強き酸なり



蝕まれ多く語らぬ父の骨カリエスというながき欠落



わが胸にあばらという運河あり、沿うて背骨へ、のぼりて脳へ



これきりのお願いなどと言わないで何を運びしケセランパサラン



このままで終わるがよかろう、いいや否、千年悔いて咲く花あらん



おざなりに水やる朝も花々は意志あるごとく顔を持ち上ぐ