秋天


やれ、空へ一つの旗を掲げおりここに居るよとわれは惑いて        居:お




秋雨は音叉ふるわせこの道を戻るなかれと過ぎてゆきたり




加害者であるべきことの仕方なく問わず語りに剥がれゆく空




秋天の福音つげる雲たかく羊いっぴきを贖罪として




思う、とはいつかかならず戦ぐもの薄荷のごとき傷の残れり        戦:そよ




白秋の雨ゆるやかにさよならもきみの暦へ消えてゆきにき




かの地へと流れつくよう祈る手の割れてあらわる秋天の舟




歌うたう風のがしたる羊歯類のみっしりとあり雨の降るらん