光りの中の八月


雷雲の眩しかりけり少年のひとりが消えし夏のとびらよ
           
          

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舌を垂れ涎を垂れて犬のごと上目遣いのいち日のあり



微熱あり朝へしのびくる雨とひと匙すする粥のにおいと        朝:あした



ひと口の水わけあいし八月の花火を恐る人のありたり



墓を抱くあなたもわれもしばらくは土塊のごと生きておらねば



見上ぐれば入道たてり光背を畏れて過ぐる六十年を



陳腐なるコトバとミライ八月にきみが焼くべき朱き印画紙       朱:あか



老年も荒野を目指せいざデモへデモへ立てよと晩夏の風が       荒野:あらの



御堂筋われらが夜の反戦歌スワロフスキーの沈黙を過ぐ



濡れた砂一握の砂八月のさよならを告ぐ永遠の没り日に        永遠:とわ  没:い



砂はらうしぐさも忘れ汚れたる旗のごと立つ汽水のほとり



千年を流れしのちに帰り来よわだつみに咲く花をたずさえ



千年を待ちくたびれて万年の望みをたくし海に向かえり
           
          

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半ズボン眩しかりけり永遠に立てかけられし虫捕り網は