みずうみは水に溺れて
ここからは致命傷なの指切りの指で引かれる切り取り線
赦せとは言えない日々へこの頭蓋落日のごと傾いでゆきぬ
こぼれくる言葉をひろう春の日の影あわくしてきみは他人に
白皿に片身の魚もうこれはわたしではないあなたでもない
西日入るキッチンごろんとわたくしの半生がうち捨てられてある
地下茎の眠りの深くわたくしの物語となる雨ふりはじむ
もうきみの仕草もわすれ花の名も思いだせずに卯月のかかり
この川に沿うてゆきたし対岸に骨を集めるきみに手をふる
軋みだす螺旋のはしご思い出をつくる現場のどこにあるらん
ああここに地層が見えるきみ抱きしわが手のひらに降り積もるもの
瀉血には要領が要るのこうやって手をさしだして諦めるの
笛の音にとびらは閉まりふかぶかと列車は野をゆく菜の花をゆく
血を捨てに通う道道咲く花のその先にまで届けられるもの
懐かしいなどとほざいて振り向けばタールのような夜がきている
夜ごとの眠り深くしてわたくしが抱くみずうみは水に溺れて