デュアル
水菓子のたとえばそれは傷ついた鳥をつつんだ手の椀に似て
包むという生殺与奪おおいなる咎でありしか説かれる愛は
そう、たとえば机のうえのノートにもはにかむような血の痕があって
日記にはいまだに涸れぬみずうみにさまようきみの航跡のあり
ひたすらに泣きたくなるの透きとおるエレベーターで昇りゆくとき
涙する夢見ることもなかりけりかげろうの死をして一日とす
敵前の敵見あたらぬビルの空ながるる雲と人はまじわる
行き交えばわれは敵らし眼光のするどき漢の握る旗竿
手のひらは掴めるように差し出せよ頭の上から捧げられるもの 頭:ず
献血のできぬ血をもち騒音にまぎれて聞こゆO型とう声
遠く降る雨の匂いとおもうほど静かにそろう前髪がある
その髪を思い出せない朝となり雨あいまいにただただと降る
おしなべて日日は日々なり山梔子のかおりのひとつ事件のごとく
いちにちを泣いているらし初夏の風のおよばぬ窓辺のありぬ