連作 雨に祈る


空からの言葉はおもくうつむけば雨の降りだし傘をひらかな



雨の日をいかに過ごさむ音楽も開いた本も濡れてゆきたり



安定剤われを鎮めり何丁目何番地かに棲みたるツグミ



背中をおす何ものかゐる神無月かほりにむせて冬にはいりぬ               背中:せな



あるものはあるべきところにおさまりてやがて始まる叛乱のあり



雨ぐものうらめしきこと十数年飼ひならしをるわが偏頭痛



天にむけ返す祈りをひとつ持ち沐浴すませ雨ぐもと面す



雨のなかゆふぐれは来ぬおほぞらの背骨のごとく鉄塔の立つ



何もかもゆがんでゐるのだゆふぐれのつれて来たれる閃輝暗点



日の暮れにパソコンひとつ灯しゐてタクマラカンを検索しをり