足早に角を曲がればふうわりとダチュラが揺れて問いかけられて
吾に問ふな献身などはなきゆゑに不安のさなか朝咲くダチュラ
問ひ詰めてわが身にかへる虚しさの痛み鎮めんダチュラの朝に
沈黙に問ひ詰められて虚ろなる洞に咲きたるダチュラ一輪
夕づきてけふいち日の弁明をダチュラは白く待ちわびてをり
冴え冴えと新月のごと萎れたりダチュラ諦念満ちるもの待つ
エンジェルトランペットなど嘘くさくダチュラダチュラと唱えて過ぎぬ
打ち水のにほひ残れる誰そ彼になほも恋するダチュラの渇き
梅雨明け告ぐ絞首刑 きまぐれにダチュラ吊るさ れ待てる望月
夕暮れの残り香とどめ煙草屋の赤い看板ダチュラの白と
嘘に嘘繕う初夏の陽は翳りダチュラの白はさらに束の間