十五首

元日のにわかの霰わが肩に積もることなくひた打ちつづく



空おもく今にも雪が降りさうなあいまい坂を顔あげゆかむ



行儀よく先に逝くのだ久しぶり娘と歩き早足のわれ



待つのだよ胸処の芯に火をともし夜明けと呼べぬ朝が来るから



霰降り何を占ふ変拍子をどりつ春を言祝ぎたるや



シャツ干せばしとどに重くオリオンの弔旗となりてはためきもせず



那由他ある星を背負ふは手の中のたつたひとつを届けんがため



ベッドから見る星なべて名のありし左手にならぶ錠剤ななつ



冬の陽のふひに翳ればわが胸のあくたあぶくがそぞろごと言ふ



球根を手に転がせば眠たかり水栽培も無援と言ふや



痛みあるほころびならば繕はず枯れ野あじさい首さらし立つ



高らかな頌歌もたねど口笛を捧げる空の風は欅を



ああさうだ眠つてしまはう東海の夜の小島を抱き枕として



今ここにあると思へる乾し飯をいづくに蒔かん沼へ下りて



雨の夜に慈しみ泣く救済のたましひありや椿の音す