夏の妹 / 冬のイカロス
月光54号(2019/1/31発行)
稲妻 突っ立ったままいる妹は神のお告げをぼくに教える
縁側で眠るひととき夕立は人さらいのように時を連れ去り
横文字を声張り上げて縦書きに読む妹は「ホエア・ディッド・アイ・カム・フロム?」
素足から虹は伸びゆく夏空へ打ち水ごとに女となって
あのね、あの秘密を持つの妹は蚊帳の端っこで背中を丸め
三つ編みの似合う娘だったもうたれも口をつぐんで夏を歌わない 娘:こ
うつむけばまつげの先からこぼれゆく夏のしずくはアスファルトに消え
美しき冬の扉よオリオンよ仰ぐときには指のさきまで
落下する夢を見ることなくなりて穏やかな坂くだり続ける
カシオペアあれは爪痕燃え尽きるイカロスがつかんだ宇宙の傷だね 宇宙:そら
マフラーをくれた女を思い出す今年の冬はたれも憎まず 女:ひと
大嘘に立ち会っているぼくの飲むコーヒーの不味さと灰色の空
これまではあこがれずにいたどこからを空と呼ぶのか飛び跳ねてみて
燃えながら落ちてくるのだ嵌め殺しの目をした幾羽ものカラスが